38歳の男性は腰の痛みをデスクワークのせいだと思っていた:実際はすい臓がんだった

2026年7月28日

38歳の男性は腰の痛みをデスクワークのせいだと思っていた:実際はすい臓がんだった

深夜のデスクにうずくまったまま、彼はの奥に広がる鈍痛をごまかしていた。
日中は作業に没頭し、夜になると湿布とストレッチで片を付ける。
「ただの座りすぎだ」と自分に言い聞かせ、翌朝また椅子に座った。

ある日、痛みのが変わった。鋭いというほどではないが、背中の内側からじわじわと広がる。
ふと鏡を見ると、顔色が冴えない。食欲も気まぐれだ。
「忙しい時期の疲労だろう」と、彼はまた先送りにした。

見過ごされたサイン

彼は30代後半の会社員。在宅勤務が続き、運動は減少、椅子の時間は増加した。
背面の痛みは筋膜のこわばりにも似て、日によってがあるように感じられた。

しかし、体重がじりじり落ち、便の色が薄い日が増え、尿が濃い
「これはいつもの腰痛と違う」と、ようやく受診を決めた。
医師は静かに言った。「痛みのは、背中ではなく内臓かもしれません」。

診断に至るまで

初診では問診と血液検査、そして腹部の画像が並行して行われた。
エコーで見えにくい臓器にはCTMRI、さらに詳細には内視鏡的超音波も使われる。

やがて見つかったのは、すい臓の。説明は端的だった。
「背中に響く痛みは、すい臓の炎症や腫瘍が神経に波及した可能性がある」。
彼は小さくうなずいた。「痛みの置き場所を間違えていたのは、自分だけじゃなかった」。

すい臓がんの難しさ

すい臓は体のにあり、症状が出にくい
初期に現れるサインは曖昧で、日常の疲れに紛れやすい。

知っておきたい「赤信号」は、次のとおりだ。

  • 背中から腹部にかけての持続痛、夜間に悪化
  • 理由のない体重減少や食欲の低下
  • 便の色の変化や尿の濃色、皮膚や白目の黄ばみ
  • 最近発症した糖尿病や血糖の乱高下
  • 家族歴、喫煙、慢性膵炎などのリスク

「すい臓は沈黙が得意なんです」と、専門医は苦笑した。
「だからこそ、些細な違和感を拾い上げるが必要です」。

デスクワークとの錯覚

長時間の座位は筋肉を固め、腰を圧迫する。
たいていの痛みは運動と休息で改善し、痛みの場所が指で示せることが多い。

一方、内臓由来の痛みは広がりやすく、姿勢と無関係に続く傾向がある。
夜間に目覚める痛み、鎮痛薬で鈍る程度の違和感は要注意だ。
理学療法士は言う。「『いつもの』と『どこか違う』、その境目を言語化しましょう」。

どう受け止め、どう動くか

彼は症状の日誌をつけ、痛みの時間、食事、便のまで記録した。
その紙片が、医師との共有を滑らかにし、検査の優先順位を決めた。

必要なら別の医療機関で意見を求め、診断に階段を作る。
焦りを減らすため、家族や友人に状況を開示することも力になる。
「頼るのが下手なら、練習すればいい」と彼はつぶやいた

本人と家族の声

告知の夜、彼はを開けて深く呼吸した。
「怖いのは不確実さ。名前がわかれば、戦略が立てられる」。

パートナーは静かに支えた。
「あなたが痛みを我慢し続けた日々を、もう延長しないで」。
二人は小さな約束をした。「体の声を無視しない」。

未来に向けての教訓

この経験が教えるのは、痛みの文脈を疑う勇気だ。
仕事の負荷に責任を押し付ける前に、体の変化の連なりを見る。

企業もまた、健康相談や早期受診の仕組みを整えられる。
在宅環境の椅子やモニター、休憩の設計はただの福利厚生ではない。
それは、見えないサインを早く拾うための装置だ。

研究は進み、画像やバイオマーカーの精度は向上している。
けれど最後に問われるのは、日常の違和感に耳を澄ます習慣
「自分の体の編集者になろう」と、彼は手帳を閉じた。
痛みは敵ではない。メッセージだとわかった日から、歩き方が変わった

高橋 彩乃

高橋 彩乃

日本のスポーツライターです。プロ野球、MLB、高校野球を中心に、試合の流れや選手の背景を丁寧に追っています。現場の空気感とデータの両面から、野球の魅力をわかりやすく届けることを大切にしています。